大学改革シンポジウム(一般社団法人国立大学協会との共催)を開催しました(1月20日)
令和6年1月20日(土)に一般社団法人国立大学協会共催令和5年度大学改革シンポジウムとして「情報分野におけるジェンダー平等実現に向けた高度情報教育促進支援プログラム構想」を開催しました。奈良女子大学は一般社団法人大学改革支援・学位授与機構が公募した「大学・高専機能強化支援事業(高度情報専門人材の確保に向けた機能強化に係る支援(支援2))」に選定され、女性高度情報専門人材の育成に着手しており、その事業で協働を構想中の武庫川女子大学、京都女子大学からも講師を招聘して、女性人材の育成における課題や展望について議論することとしたものです。
シンポジウムは2部構成で前半では2名の有識者による講演を実施しました。
1人目は奈良女子大学名誉教授・追手門学院大学法学部教授三成美保氏で「ジェンダードイノベーションと女子大学の役割」の演題で講演が行われました。三成教授からはジェンダードイノベーションの定義説明がなされたのち、女性研究者等多様な人材・知見の相互作用がイノベーションの源泉であり、イノベーション自体にも革新(ジェンダードイノベーション)が求められること、そうした状況においては女性リーダーの育成に代表される女性・女子のエンパワーメント、フェムテック・性差医療に代表される女性・女子の身体やニーズの重視、男性中心主義の科学技術から脱却し、ジェンダー平等の学術・科学技術を推進することが必要であり、ジェンダードイノベーションの推進において今回シンポジウムのような女子大学間連携事業の実施は非常に有意義であるとの指摘がなされました。
2人目は武庫川女子大学社会情報学部長鯵坂恒夫氏で「ジェンダー平等がもたらす情報科学教育研究の進展」の演題で講演が行われました。鯵坂教授は日本は創造よりも改善・品質向上の分野で優秀であり工業化では目覚ましい成果を上げたものの情報化には弱くイノベーションを起こすことに成功できなかったと延べ、その原因のひとつが均質志向・集団思考でそうした悪弊を断つのが多様化(diversity)であり、イノベーターが求められる状況においては「女性らしさ、女性ならでは」といった根拠のない集団思考を廃し、優秀な人材の能力発現をはかることが重要で、ジェンダーバイアスをもとに初めから女性を除外してしまうことは社会にとって損失であり、イノベーションの妨げとなると指摘されました。
シンポジウムの後半では、奈良女子大学研究院生活環境科学系生活情報通信科学領域松本尚教授、武庫川女子大学社会情報学部新田直子教授、京都女子大学データサイエンス学部石川由羽講師より各大学の情報人材育成の取組事例について報告がなされました。
最後にシンポジウムのまとめとして質疑が行われ、聴講者からはジェンダーバイアスからの脱却には中高生、大学生への教育に加え、その親世代へのリカレント教育も重要、との指摘がありました。
シンポジウムはジェンダードイノベーションにおいて女子大学に求められる役割の確認とジェンダードイノベーション実現に向け、女子大学が連携して多様な取組を推進することの重要性を確認する好機となりました。