奈良公園にて「子守木」の社会実装を公開しました(11月10日)
本学出身の小西くるみさんと川合布公帆さん(人間文化総合科学研究科 住環境学専攻 根本研究室在籍)が、木材を活用した社会課題解決の学生アイデアコンペ(「第1回つなぎコンペ:株式会社日建設計主催/2021年」)で「優秀賞」を受賞した「子守木 森の大木が街の幼木を守る」を、実際に社会実装する様子が令和5年11月10日(金)に公開されました。
「子守木」の社会実装当日は、報道陣および関係者約30名が見守る中、奈良公園にてコンペを主催した日建設計より主旨説明、小西さん・川合さんによるコンペ案の紹介ならびに当日行うメンテナンス内容について、また奈良県より奈良公園の樹木が抱える課題についての話がありました。2023年3月に設置した「子守木」の構造材ではない部材を、奈良公園から切り出したナンキンハゼの角材に変更して長さも少し長くしたこと、鹿が顔を入れられないように工夫したこと、伐採した木を利用することで公園内での物質循環を目指すとの説明がありました。また、割竹挿入竪穴式土壌改良法を用いているため、液肥も容易に効率よく投入可能とのことで、より多くの人に関心をもってもらいたいと、インスタグラムのQRコードも印字されているプレートが取り付けられています。
<「子守木」について>
「子守木」とは、全国の街の樹木が抱える問題(劣悪な土壌環境と管理不足)と、奈良県の地域課題である「鹿の食害」を解決するためのアイデアです。街の樹木は、劣悪な土壌環境による生育不良や、人の無関心によって起こる管理不足により樹木が支柱に食い込み枯死に繋がってしまうなど、様々な問題を抱えています。さらに奈良県では、鹿が在来植物の若い芽や枝を食べてしまうことで幼木が育たず、在来植物が減少していく一方、ナギやナンキンハゼといった鹿の不嗜好性の高い外来植物が増加し、奈良公園の生態系が脅かされています。
これらの課題に対し、小西さんと川合さんが、日建設計 Nikken Wood Lab が木材利用の裾野を広げるアクションとして発案した木質ユニット「つな木」を活用し、幼木を守りながら育てる「子守木」を考案しました。
子守木の設置により、幼木を人的踏圧から防ぐことができ、また、「子守木」を支える竹が土中環境を整えて根の成長を促すことで樹木が強く育ちます。さらに奈良公園では、「子守木」は鹿の食害から幼木を守る役割も担い、古くから「神の使い」とされ特別な存在である鹿と樹木の共存も実現します。そして、日々成長する幼木に合わせて「子守木」の形や大きさを組み替えることで幼木を守り育て続け、次世代の後継樹を育むとともに、将来的には「子守木」がベンチなどに変化することで、人々の憩いの場にもなり、街の賑わいを創出することを目指します。